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2009.06.26 (Fri)

新連載 15  凶暴さを増したテビクァリ河



15
凶暴さを現したテビクァリ川




テビクァリ河はその凶暴な本性を現してゴウゴウたる濁流になってきた。
流木が上流から次々流れてくる。
(ヤバかった!)北原たちは、寒さにガタガタ震えながら
一人取り残されたドン・ペドロ号を見つめていた。
テントは、殆ど防水機能を失っていてボタボタと落ちて来る。
「ここも危ないですねぇ~。あの土手に上がりましょう!」
流木がダンスでも踊るようにクルクル回りながら流れていく。
水かさもジワジワと上がってくる。
一時避難した灌木地帯は岸辺と土手の中間位にあり、
こんもりと盛り上がった丘状になっているのだが、
これだけの大雨になると水没の危険性があった。
北原たちは、雑草をかき分けかき分け土手の上に
2往復して荷物を運んだ。
土手に上ってみると左側下流方向に廃屋のようなものが
雨のカーテンを透かしておぼろに見えた。
とりあえずそこに避難することにした。
その小屋は、土がむき出しで丸太を無造作に組上げた仮小屋だった。
釣りか狩猟に来た時に使うのだろうか、10畳程の内部は、
木切れやポリタンク、段ボール箱等雑多なものが散乱していた。
だが、雨だけはしのげるのがありがたかった。
1、5m幅の板窓を上にはね上げて突っかい棒をする。
風は収まったが、土砂降りだ。
まだ昼前だというのに、外は夕暮れのように暗い。

「火を起こそうや。寒くて仕様がないぜよ!」
定やんがどら声を張り上げる。
4人ともびしょ濡れになっており、ガタガタ身体を震わせている。
幸い段ボールに木切れもある。小屋の中央にボッと赤い炎が上がる。
ブスブスと湿った木は不機嫌に灰色の煙を巻き上げて中々、
景気良く燃えなかった。
それでも一応、赤く燃え焚火らしい体裁になってきた。
必死に作業している時は気にならなかったずぶぬれの衣類が
身体にまとわりついて気持ちが悪い。
皆、パンツ一丁になって焚火を立ったまま囲んだ。
背中をあぶり、お腹を暖めてやっと人心地がついてきた。

「これまでに幾つもの支流が流れ込んでいたから、
それらの水がドッと流れ込んで来るから増水のスピードが早いよな」
「筏は恐らくダメだろうな…」ボソリと武やんがつぶやく。
「あの細いロープ2本じゃ支えきれんだろうね」」
「問題はボートだよな?」
「大丈夫ですよ。太い幹にしっかりロープで結びつけましたから。
それにあそこは小さな入り江になっている澱みなので大丈夫ですよ!」
自分に言い聞かせるように学船長。

人心地ついてくると腹が減ってきた。
アイスボックスに5kg程の牛肉の固まりが2~3個とチョリソ
(ソーセージ)もある。パンも別なボックスの中にビニール袋に
入れて保存していたので幸い雨に濡れずに済んだ。
もう一つのアイスボックスには釣り上げたピラニアが
7、8匹入っている。
どうやら食料だけはたっぷりある。
「この分じゃ、今日はここで雨宿りだな。
腰を据えてアサード(焼き肉)でも焼くか…」
料理長定やんが薄くなった頭に、ねじり鉢巻をキリリと
締めて立ち上がる。
肉片を手ごろな大きさに切り塩をまぶす。
部屋の中を探すとアサードに最適な鉄の棒も3本隅っこに転がっていた。
この小屋の所有者がここでアサードをやっていたのだろう。
その鉄棒を肉片に差し込んで両側に板切れを交差して
作った支柱にかける。チョリソにピラニアも串刺しにして焼く。
外は相変わらずザ~ザ~降りだ。
やがて美味しそうな匂いが部屋中に立ちこめてきた。
「畜生、これにビールがあれば言うこたぁ~ねぇんだが!」
「それが持って来たんよ」武やんが嬉しそうに言う。
「そりゃ~、すげぇ~や!」ドッと歓声が上がる。
さすが ゛ビール命゛の武やん。
土砂降りの雨の下、小屋の中で蛮から男たちの酒宴が始まった。
肉は塩味のみの焼き肉が肉本来の旨味を味わえて一番ウマイ。
また、塩味の効いたピラニアも絶品だった。
北原たちは、まさに「矢でも鉄砲でも持って来い!」
の躁状態になっていった。



避難小屋に一泊



小屋の中の大宴会が盛り上がっていくにつれて外も明るくなり雨は、
段々弱まっていった。
しっかりアルコールと食料を補給した4人は、元気を回復した。
さっそく、小屋を出て筏を見に行った。土手を降りて行くと最初に
避難した丘陵地のすぐ下迄濁流に浸かっていた。
「やっぱり、流されたんだ…」
当然の如く筏の姿は見えなかった。
さすがに4人ともガックリと肩を落とした。
「ボートは大丈夫かや?」
「見に行ってきます」学船長、迂回しながら下流へ下がって行った。
「この分だとボートも流されたかもしれんぜよ」
水かさを増したテビクァリ河の茶褐色の濁流の中を大小雑多な
木々の根っ子や枝葉が踊るように流れて行く。
北原は、今さらながらこの筏下りの無謀さを思い知らされた。
暫く3人は呆然と濁流を眺めていた。
「ボートも流された、となるとこりゃ~ヤバイぜよ」
「ウ~ン、ここの場所も把握出来ないしナ~」
空を覆っていた分厚い黒雲は姿を消し青空が広がってきた。
小屋に戻って待機していた3人に
「ボートは無事でしたよ!」弾んだ学船長の声が聞こえた。
「よっしゃ~!」
「これでひとまず安心だ…」
「ボートさえ無事なら、何とかなるよ」
とりあえずその夜は小屋に泊まり、明日ボートでピラールを目指す事にした。



筏は流出



翌朝、5時半起床。缶ビールをコーヒー代わりに固パンをかじって
手早く朝食を済ませる。 荷物をまとめてボートを停めている所へ行く。
歩いて15分ほどのその場所は、U字型の天然の船溜りになっていた。
河の水位はほとんど平常に戻っていた。
ボートを点検したがどこも異常はなかった。
ラッキーだった。 この船溜りの入り口がもっと幅広かったらここに筏を
留められたのだが、ちょっと狭すぎた。
空は歌い出したい程、蒼く蒼く澄みきっていた。
今日は、暑くなりそうだ。
出発だ。ブロローン!
助手席の椅子の背にグーンと押付けられる。 (なんて早いんだ!)
まさに異次元のショックだった。
トロトロした筏の流れに慣れていた身体には、
いきなりジェット機に乗ったようなスピード感だ。
両岸には昨日の大雨の樹木の残骸が累々と横たわっていた。
ビュ~ビュ~ッ、岸辺の風景が流れ去って行く。
筏生活のシンプルなノ~ンビリ時間とは異なる時間がそこにはあった。
原始生活から一気にニューヨーク、東京の近代生活に
放り込まれた感じだ。 原始生活も「超極楽」だが、
このものすごいスピード感も麻薬のような魅力を持った世界である。
いったん、禁断の世界を味わうと、もう元の原始生活には戻れない。
エスキモーやインディオたちが、近代社会の快適な暮らしを味わうと、
もう元の生活に戻れないという、彼等の苦悩も分かるような気がする。
より早く、より遠くに、より合理的にと経済効率を至上命題として
突っ走る現代文明を誰も止めることは出来ない。
洒落たイタメシやカフェバーなどより昔の鄙びた駅前商店街の路地裏で
醤油の染み等で薄汚れたエプロン姿のお婆さんが切り盛りする
一膳飯屋の方が好きだ、と言っても後戻りは出来ない。
鳥や吠え猿の鳴き声を聞きながらユラユラ流れる筏任せの
無為の営みの中にちょっぴり見出すことが出来た充実感…。
時間だけは無限にある無為の生活の贅沢感…。
内なる心を発現させるには自然の中でただ何もせず、ぼんやりと、
ただぼんやりと無為に過ごすこと…。
しかし、これこそ現代人が一番苦手なことである。
北原も頭デッカチになっていた20代前半、何かを得たくて
テントを担いで猿で有名な高崎山に分け入った。
だが、一晩も過ごすことが出来ず巷に逃げ帰った。
西行や芭蕉、良寛、山頭火たち先哲の優遊たる旅に憧れてはいる。
だが、深山の枯葉をカサコソ独り踏みしめて歩く寂寥、
凍傷で爛れた手足を抱いて雪中のあばら屋で病いに倒れ、
しんしんと迫る死の予感に耐えた彼らの旅はあまりにも過酷だ…。
棄てて棄てて、すべてを棄て去って心をカラッポにして無為に
ひたすら歩く孤独な魂の遍歴に漂うた先人たちの旅…。
ひたすら己自身を見つめ続けるその内省行脚の第一歩を
踏み出すためには、幸せの青い鳥と信じ込んできた“物欲“
という黒い鳥を棄てなければならない。
日本人は敗戦で食うに糧なく着るに衣なくガツガツの貧困から
モノの有難さを痛感させられた。  
戦後、物質的な欲望を満たせば幸福な生活が待っていると
信じてお金を、名誉を、より便利な、より快適な生活を追い求めて
突っ走ってきた結果、日本は世界1の繁栄を手にした。
だが、満たされた筈の魂は益々飢餓感が募りフランケンシュタイン 
のような奇形人間を次々生み出した。
どんどん脳神経を破壊されつつ退化していく人間牧場の
ホモサピエンスをいったい、何が待っているというのか?


メーターがないからはっきりとした数字は分からないものの
時速70、80㎞程度に感じられた。
「オ~ット、危ないぞ!」時折、水面からニョッキリ木々の残骸が
顔をのぞかせている。
途中、筏がどこか岸辺に漂着していないか注意して探すが影も形もない。
2時間も走っただろうか、左岸に入り江が見えてきた。
ブロロ~ンッ、減速して湾曲した入り江に乗り入れる。
まさに格好の入り江だ。入り口部分がトックリの口のように狭く
中に入るとま~るい池のような船着き場になっている。
ボートを茶褐色に濁った浅瀬に横付けして上陸する。
浅瀬から岸の部分は泥土で牛や馬の足跡でグチャグチャになっている。
多分、ここが水飲み場になっているのだろう。
ズブリとはまる、ゆるやかな坂を上がると牧場地帯になっている。
ひび割れ乾いた灰濁色の泥土の岸辺のヤシの木陰にコーラ缶が
無造作に捨てられている。 やっと、文明生活の一端に戻ったようだ。
岸辺の葦やイグサなどがグッタリと暑さにうなだれている。
日差しが強い。 乾いた風が頬をなぜる。
枯れた牧草の彼方にかげろうがユラユラ燃え上がっている。
「近くに牧童がいる筈だ」 4人、黙々と牧場の轍(わだち)で
えぐれた小道を歩く。
やがて1㎞位前方、牧柵の奥にデスペンサ(食料品店)らしき建物と
その右横に7、8軒の民家が見える。入り江から歩いて20分位だ。
デスペンサの薄暗い土間を入ると、奥の窓際のテーブルで
カーボーイ2人と30歳前後のヨーロッパ系移民の子孫であろう
白人夫婦が昼食の最中だった。
左手が店になっておりささやかな商品を無造作に棚に並べている。
「オラ、ケタル!」(ハイ!どうですか?)
まずはパラグアイ定番の挨拶。
4人はここで冷えたコカコーラを一気に飲み干した。
店の主人の話では、ここはシエルボブランコという所で、
ここから約40㎞行くとちょっとした町があり、そこには、
アンテルコ(電話局)もあるそうだ。
ここにオートバイタクシーがあるのでそれを利用しろという。
そこまで行けば燃料も売っているそうだ。
「ピラールまで俺のモーターボートで3、4時間で行くよ」という。
パラグアイ人特有の大ボラが始まったかと思ったが、
満更ウソでもないようだ。
「パラグアイ河にぶつかる出口が一番迷いやすいところだから
気をつけた方がいい」 これから下流に行く程、無数の中州があり
支流があるので非常に迷いやすいという。 主人のモーターボートは
40馬力だというから学船長の60馬力のボートだったら
もっと早いかもしれない。とりあえず学船長がその町まで燃料と
留守家族、それにピラールの専門家事務所に電話するため
オートバイタクシーで行く事にした。
4人は白人夫婦が食べていたプチェロ(肉入りスープ)とパンで
腹ごしらえをした。 柔らかい肉にコッテリとしたスープはうまかった。

バリバリバリッ! 学船長がオートバイの荷台にまたがり出発した。
往復3、4時間はかかるだろう。
3人はコカコーラの大瓶1本と小瓶大の氷片3個を買って
炎天下の牧場を入り江に戻った。
「燃料も何とか確保出来そうだし、学が帰る迄時間もあるから、
もうちょっと下流迄下がって筏を探してみないか?」武やんが言う。
「そうだな」
やはり1週間近く筏生活の快適さを味わった面々、衆議一決。
ボートに乗り込み筏探しに出かける。
入り江を出て30、40分下流に行くと、
「オーッ!」
一斉に歓声が上がった。まさに奇跡だった。
ドンペドロ号が何事もなかった様に白い砂浜の浅瀬に
その勇姿を見せていた。
大きく湾曲したカーブの浅瀬に座礁したのであろう。
うまい具合に浅瀬にドラム缶が乗り上げて動けなくなったらしい。
幸いどこも傷んでいるところはなかった。
ただ、こまごました荷物や備品は流されてなくなっていたが、
釣り道具など大事な道具は筏上の固定したドラム缶の中に入れて
上からテントで覆い縛り付けていたので大丈夫だった。
「ヨ~シャッ、今夜はここで停泊するか」
これで今夜の宿営地は確保出来た。
ボートに積み込んでいた荷物を再び筏に移す。
ボートで一旦、筏を引っ張り座礁した所から動かすことにした。
ボートを武やんが操縦し、定やんと北原が河の中に入り筏を
押す事にした。
水は腰まであった。ブロローッと何度も引っぱり、2人で筏を押すが
ビクともしない。
「こりゃ、ムリだ…」
筏はてこでも動こうとしなかった。
「とりあえずこのままで今夜は泊まるか…」
午後4時、「もうそろそろ学が帰る頃だろう。俺が迎えに行くよ」と
武やんが入り江に向かって行った。
学船長が帰って来たのは6時過ぎだった。

「ウチのに電話して一応みんなに連絡する様にしましたから…」
燃料はオートバイだから10キロしか買ってこれなかった。
ボートの残量60リッター。何とか大丈夫だろう。
「ボチボチ筏での旅もここらが切り上げ時かもしれませんね」
筏が見つかったとはいえ、禁断のボートのスピード感を味わった
北原は既に筏での旅の気持ちが萎えていた。
チョリソ(ソーセージ)と固パンを肴にビールを飲み飲み
何となく気だるい夕食をとった4人は、明日の旅の決断を話し合った。
4人ともこれが恐らく筏上での最後の晩餐会になるであろうと感じていた。
「まぁ、ボートで一気にピラールに向かうしかないやろね」
定やんもボートでの決行説に同意した。
「筏はどうするんや?」武やん。
「デスペンサのおやじにでも処分してもらいましょうか…。
牛を売りに行くのに最適だなぁーと、あのおやじ言ってましたからね」
と学船長。
確かに張りつめていた糸がプツンと切れた以上、
これ以上の筏の旅は無理だった。
「オッ、今夜は虫がいないね」不思議なことに、
この夜は虫もいなければ蚊も出なかった。
「マママッ、筏生活最後の夜だかんよ、ググ~ッと空けろや!」
「女はお姫様だかんよ~、大事に大事に奉らにゃだめよ!」
「確かにな、この世は女と男しかいねぇんだかんよ…」
グデデ~ンと4人とも寝袋に倒れ込んでいびきをかきはじめた。
翌早朝5時半、起床。いつものように爽やかな朝だった。

河の水で顔を洗い歯磨きをし、筏をくり抜いたトイレで大小便をする。
筏生活も1週間ともなるとこのシンプルな快適さは何者にも
代えられない貴重なモノだった。
筏での最後の朝食だから、ゆったりとコーヒーとパン、
それにマテ茶などを味わった。
携帯ラジオで日本語放送に合わせる。
変なイントネーションの日本語が流れてきた。
NHKにしては変だな、と思ったらエクアドルからの日本語放送だった。
学船長が上流の入り江に行きデスペンサのおやじに筏のことを
話に行った。 学船長が戻ってきたのは9時だった。
必要最低限の荷物をボートに積み込んだ。残りの雑多なものは
おやじに適当に処分するように頼んできた。
午前10時、砂浜を出発。流れ流れて1週間、トロイトロイ筏の旅、
まるで夢のようだったな、と北原はしみじみと思った。
出発後、3、40分で岸辺の風景はガラリと変わった。
川幅は広くなり、左右にいくつもの支流が現れ、淵や池が次々見えてくる。
いずれの岸辺にも無惨な倒木が累々とその屍をさらしている。
4人は、ただ無言でビュ~ビュ~と流れ去る岸辺の風景を眺めていた。
「ン、違うようだな?」本流と間違えて支流を逆に突っ込んで行った。
幸い、途中で気が付いて引き返したのだが、あのおやじが言ったように
この辺りはまるで迷路のようになっている。
ガッガ~ッ!浅瀬に乗り上げた。
何とか脱出する。
「やはり、筏ではムリでしたね」ポツリと学船長…。
パラグアイ河、河口に近付いたようだ。
午後1時、左岸にボートを繋留しているのが見える。
多分、漁師だろう。近付いて聞いてみる。
パラグアイ河まであと10分程度だそうだ。
1時15分、遂に母なる河、パラグアイ河に出た。
さすが大河だ。川幅が広い。1kmはあるだろう。
何だか風の匂いまで違うようだ。
この河を流れ流れて行くとやがてラプラタ河と名前も変わり
ブエノスアイレスへとつながっている。
4、500トンクラスの川船で1週間位かかるそうだ。
下流に向かって右岸はアルゼンチン領、河の真中が国境だ。
右岸に近寄ればたちまちアルゼンチン国境警備艇がやってきて
拿捕される。
岸辺の風景が優しい。やがて、小高い左岸上に食料品点の
ようなものが見えた。 シエルボブランコのおやじが言っていた
店に違いない。 ボートを岸辺くぼ地の船着き場に繋留し、
4、5m程ある崖を登る。 シエルボブランコにあった食料品店の
3、4倍はあるだろう。まぁまぁ大きな食料品兼雑貨屋だ。
店の前にヨロヨロ身体を揺らして酔っ払いの爺さんが裸足で立っている。
手にアリストクラタ(パラグアイの地酒、焼酎)の瓶を持っている。

「マァ、ノメヨ、ワカイノ。オレハペンキヤダケンドヨォ~、
イマ、イッパイ、ヤッテンダ。ノメノメ…」酒飲みの共通点は、
他人に必ず酒を強いることだ。
独特の芳香がするサトウキビで作ったパ国特産のこの焼酎は、
氷にレモンを入れて塩をなめなめ飲むのが通とされている。
店の前にドラム缶を無造作に放り込んだ燃料小屋がある。
ここで燃料を買う。 店のおばさんにピラールまでの距離と時間を聞く。
ボートに乗ったこともないおばさんに分かる筈もなく
「ウナオラ、ドスオラ、ポライ…?」 (1、2時間かなぁ~?)。
大体そんな所だろう。 燃料も補給したし、
後はエンジン全開でぶっ飛ばすだけだ。
ブロロ~ン!


遂にピラール!



河の中央に大きな中州が見えてくる。 その島のような中に
仮小屋が立っている。
漁師たちがここをベースに魚をとっているのだろう。
さすが、パラグアイ河だ。点々、釣りをする漁師たちを見かける。
午後2時半、左岸に大きなクレーン。採石場だろうか?
やがて左岸に整然と植林されたユーカリ林が現れてくる。
イパカライファームの懐かしい香りがかすかに風に乗って流れてくる。
ユーカリ林を過ぎると、丸太を山積みした工場が見えてきた。
煙突からモクモク煙が出ている。
これが世に名高いピラールの紡績工場か…。
工場を過ぎると生活の匂いが充満したピラールの町並みが現れる。
3時40分、クルブペスカ(魚釣りクラブ)の入り江に入る。
その船着き場に午後の日差しを頭上に白いワンピースも眩い
日本人セニョーラたち3人がパラソルをクルクル回しながら
4人に手を振っている。
北原は一瞬、日本映画「時代屋の女房」の故・夏目雅子が
パラソルをクルクル回しながら橋の上を歩いているシーンを連想した。
多分、ピラール駐在の専門家夫人たちだろう。
「着きましたね!」ニッコリ、学船長。
「やったな…」武やんもひげ面をほころばす。
「軍楽隊の出迎えが足りんね」と冗談を飛ばす定やん。
北原も涙と鼻汁でグシュグシュになった顔をボロタオルでぬぐった。
                            (続く)





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