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2009.06.15 (Mon)

新連載 7、とんだ武勇伝から、留置所に

7、とんだ武勇伝から、留置所にー


イグアス日本人移住地は、パラグアイとブラジル国境を
隔てるパラナ河にかかる友情の橋から35Km
アスンシオン寄りに位置し総面積87,763haで
1961年、日本海外移住振興株式会社が分譲を開始した。

異国での初運転に自信はなかったが、引き受けた。
その日、二人は丘の上のキムさん兄弟が経営する
養雛場にバスで行った。
車はレンジローバー、英国を代表するジープだ。
弟が乗っている車より程度はいい。
最初、寺岡が運転した。
キムさんの養雛場を出てすぐ道路両側に
広大なパラグアイ国立農業試験場がある。
試験場からゆるやかな下りとなり、
しばらく平坦路が続く。
やがてまたゆるやかな勾配を登ると、
パラグアイ最大の教会カークペの大聖堂がある。
カークペの教会を抜けるとかなりきついアップダウンがある。
それを過ぎるとあとは一面、茫漠たる牧草地帯が続く。
北原はのんびり草を食べる牛の群れをボンヤリ見ながら、
人生の不可思議さを感じた。
あの日本での様々な修羅場から逃れた今、
しみじみ新しい人生がスタートしたのだと実感した。
頬に吹き付ける風が自分の過去を
洗い流してくれるようだった。
蟻のような人生から大空を飛翔する鳥のような人生、
悪くない…。

「パラグアイは人口の倍以上の牛がいるから
食料危機は心配ないですよ」
兄さんの日本語の方がなめらかだ。
「6年前に移住して来ました。当時、
大きな養雛場がなかったので始めました」。
パラグアイは当時、白い卵ばかりだったので
アメリカに行って赤い卵を産む種類のつがいの親鶏を
仕入れて卸したそうだ。
「赤卵の方が栄養価が高い」とのセールスが効いて
順調に得意先を伸ばした。

2号線は殆どまっすぐな道なので運転は楽だった。
ただ時折、長距離バスや大型トラックとすれ違う時は
ヒヤッとする。
国際道路とは名前ばかりで片側1車線しかない。
その1車線も大型トラックの車幅一杯一杯だから
危険極まりない。
すれちがう時はブッワーン!という風圧でジープが
ビリビリと揺れる。
イグアス移住地迄の中間点当たりで運転を交代する
約束だったが、「まだ大丈夫ですよ」
寺岡も運転に慣れてきたようだった。
寺岡は建築設計士だった。

千乃女史の最初の移住計画はアメリカだった。
しかし、永住ビザの取得が難しい、
ということからこのパラグアイに変更した。
「僕の目標はアメリカなんですよ」
寺岡は今も夢を棄てていない。

「休憩しますか」キムさんの兄さんが言った。
大牧草地帯の真中の直線道路のゆるやかな勾配を登り切ると、
突然左前方にガソリンスタンドと赤レンガ、
赤屋根のレストランが見えてきた。
200Kmの距離表示が道路脇に立てられていた。

「何でも注文して下さい。ここはドイツ人が
経営しているんですよ」
「こぎれいな店ですね」
寺岡が建築士の目になって店内の内装を眺めた。
天井は瓦の下にドイツ人を象徴するような頑丈な角材が
組み合わされていた。
窓は木製の千鳥格子で落ち着いた雰囲気を醸し出していた。

「ビフテキでも食べますか?」
「あ、いいですね」二人とも頷いた。
農場の食事では美味しい肉を食べていなかった。
やがて辺り一面にうまそうな匂いが漂い料理が運ばれてきた。
だ円形の鉄製の容器にジュージューと音をたてる
大きなビフテキの上に目玉焼きが乗っている。
横に炒めたジャガイモとタマネギ。
二人は生つばを飲み込んだ。
日本では絶対お目にかかれないわらじのように巨大な
ビフテキをガシガシと食べた。
うまかった。
日本の柔らかいばかりの肉と違って歯ごたえのある
その肉は肉汁をたっぷり含んでいた。
ビフテキがこんなにうまいものなのか!
やはり肉食人種が作るビフテキはうまい。
二人とも改めて思い知った。
日本だったらまず食べ切れないようなわらじステーキを
全部平らげてしまった。
キムさんの兄さんは半分以上残していた。

「やはり若い人の食欲はスゴイですね」
満腹の腹をなぜなぜ北原は運転席に乗り込んだ。
ここから移住地まで90Km…。



軍人ゴンザレス登場




農場生活は、1年半程順調に推移した。
4月の暖かい穏やかな日ざしが降り注ぐ午後、
農場に軍服を着た上級士官らしき軍人が若い兵隊を
1人連れてやって来た。
鼻の下に黒々としたヒゲをたくわえた
40年輩のガッシリした体躯のゴンザレスというその士官は
「千乃女史の弁護士に頼まれて農場の維持管理のため
若い兵士をここに常駐させる」という申し出をした。
西部劇によく出る如何にも強欲そうな顔つきをした
ゴンザレスは顔から受ける印象通り有無を言わせぬ
押し出しで迫ってきた。
別に委任状を持っているわけでもなく強引な割り込みだった。
嫌な予感はしたが断れなかった。

その少年のような兵士は女子寮の角のバラック小屋に
寝泊まりするようになり、同じパラグアイ人同士、
牧童のチトと馬で牧場内をウロウロするようになった。
その内、朝のミルクの取り分を巡ってその兵士と
イザコザが起きるようになった。
時折、農場にくるゴンザレスに苦情を云うと、
「自分はこの農場の全権を委任されているから
ミルクも全部もらっていいのだが可哀想だから
お前達の分は残してやる」と断定的に宣言した。
この日から北原たちの苦しい戦いが始まった。

それまで北原たちがミルクをチーズにしたり、
近所のパラグアイ人家庭に売り歩いていたのだが、
ゴンザレスが少年兵を新たに2人入れてその仕事を
分捕ってしまった。
朝、コラール(囲い、搾乳場)に入れている乳牛の乳搾りを
少年兵3人が鼻歌混じりでやるようになった。
北原たちの分はチト1人で細々と絞るようになった。

「その軍人はホントに委任されているのかね~」
キムさんが唾を飛ばしながら首をひねる。
「日本人同士の内紛を聞き付けて農場乗っ取りを
狙っているかもしれないね」
こんな話はこの国ではよくあることだという。

少年兵たちに皆で詰め寄っても
「オルデン デ ミ カピタン!」(上官の命令だ)と
せせら笑って相手にもしない。
相手が17~8才の少年に過ぎないだけに
「こんな子供に馬鹿にされて…」
と歯がみするばかりだった。
農場の男性たちはみな温和な性格の人物ばかりだったから、
あまり過激な行動には出ない。
かえって女性達の方が熱くなって口々に少年兵に詰め寄った。
まぁまぁばぁちゃんは言葉が出来ないからあまり出番はない。
若い西川みき、大野恵子の二人が少年兵口撃の尖兵だ。
高校、大学とラグビーをやった北原は、
時に内にほとばしる闘争心に火がつき激高して
少年兵を怒鳴りつけた。
すると彼等は腰のピストルを抜いて「バーンッ!」と
狙いを定めて撃つ真似をしてケラケラ笑った。
いくら北原たちの人数が多いといっても銃には敵わない。

少年兵たちが日々我が物顔にふるまう中、
ゴンザレスが後ろに荷台のある1台の小型トラックに
乗ってやって来た。
朝からどんよりとした鈍い灰色の雲が上空を覆った
その日は冷たい南風が吹いていた。
ゴンザレスはテンガロンハットを被った運転席の中年の男と
車から降りてコラールの方に歩いて行った。
畑でトウガラシの収穫をしていた北原と深田兄は
「何でしょうね?」
とお互いに顔を見合わせながらゴンザレスたちの後を追った。
コラール(牛の囲い場)に少年兵が牛を追い込んでいた。
「ケ・ アセール?」(何をしているのか?)
深田兄が柵の外で腕組みをして立っている
ゴンザレスに聞いた。
「牛を売るんだ」
当然という顔でゴンザレスが答えた。
北原は、カーッと頭の血が逆流しそうになった。
罵声と共に殴り掛かりそうになる自分を
必死で押さえ込んで
「これらの牛は俺たちの牛だ」と叫んだ。
もう1人のパラグアイ人が奇妙な動物でも
見るような眼差しで北原たちを見つめた。
牛の仲買人らしかった。
ゴンザレスは、「弁護士の命令だ」
ふてぶてしくうそぶいた。
「委任状を見せて下さい!」
と深田兄が「ポルフアボール」と丁寧な口調ながら
断固とした決意を込めて迫った。
「今度見せてやる」
パラグアイ人特有の言い回しだ。
彼等の云う「今度」は永遠にない。
少年兵達がオス牛を10数頭、柵に追い込んだ。
ゴンザレスと仲買人は北原たちの抗議を尻目に
牛の選別を始めた。
北原と深田兄は身体を張ってその作業を止める事も出来ず、
屈辱的な敗北感に唇を噛みしめてその作業を見守った。
毒々しい黒々とした雲が益々低く頭上に
覆いかぶさってくるような圧迫感を覚えた。
牛をトラックに乗せるのは大仕事だった。
少年兵3人と仲買人が鞭や口笛で叱咤して戸板を
無理矢理登らせた。
この騒動に女性や子供達も何事かと駆け付けて来た。
「牛を何処に連れていくの?」
寺岡の由利ちゃんが無邪気に聞いた。
ゴンザレスと仲買人は選別したオス牛2頭を
トラックに乗せて農場を出ていった。

北原達は外国での自己防衛策を根本的に
考え直さなければならなかった。



イルカの回し蹴り 留置場へ



段々とゴンザレスと少年兵たちの傍若無人振りは
エスカレートしていった。
彼等少年兵たちはドジとハシムの2頭の馬と新たに
1頭の馬を手に入れて牧場内を我が者顔に疾駆し
牛を追い回していた。
ゴンザレスが牛2頭を連れていって2週間もしない内に
また彼が仲買人とやって来て新たに2頭を連れていった。
太陽の強い陽射しで芝草のむせ返るような夕方、
事件は起こった。 少年兵3人は乳牛をコラールに
入れ終わって談笑しながら女子寮の前を通りかかった。
丁度、西川みきと大野恵子の2人が洗濯物を
取り入れる所だった。
彼等はヒューヒューッと口笛を吹いて二人をからかい始めた。
1人が西川みきが抱えていた衣類を取り上げようとした。
取られまいとして揉み合いになった。
すると少年兵が西川みきを羽交い締めにして抱きついた。
すると他の2人も欲情にかられ大野恵子に襲いかかった。
「キャ~ッ!」
と悲鳴を上げる2人にイルカと深田弟が気づいて
「コラ~っ!」と大声を上げて駆けつけた。
異変に畑の草取りをしていた北原たちも気づき駆け寄った。
本部台所で夕食の準備をしていた女性たちも
エプロン姿で集まって来た。
少年兵3人はさすがに2人から離れて両手を広げると
「ブロマ、ブロマ!」(冗談、冗談)と
バツが悪そうに笑った。
「何をやってんだ!」いつもはニコニコと
笑顔を絶やさないイルカが血相を変えて少年兵たちに詰め寄った。
イルカの見幕に少年兵の1人が腰に吊るしていたナイフを
抜いて構えた。イルカは身体を半身にして空手の構えをした。
イルカの顔色が蒼白になっていた。
北原、深田兄、寺岡和人らが慌ててイルカを制止した。
3人に両腕を取られてヤムなくイルカも
「大丈夫ですよ」と力を抜いてやめるそぶりをした。
北原たちもイルカから手を放した。
ナイフを目の前でヒラヒラふりかざしていた
少年兵が勝ち誇ったように
「ザマーミロ!」と唾を吐き棄ててせせら笑った。
一瞬だった。
ス~と身体を落して近寄ったイルカが回し蹴りを
頭に見舞った。
ドウッと少年兵が倒れた。
他の2人が一斉にピストルを抜いた。
と同時に2人がもんどり打って倒れた。
イルカが2人の足を横倒しに払ったのだった。
北原、深田兄、寺岡の3人が一斉に2人に襲いかかって
ピストルをもぎ放した。
回し蹴りを食らった少年兵は気絶していた。
気絶した少年兵はやがて正気を取り戻した。
他の少年兵も肩を落して大人しくなった。
まぁまぁばぁちゃんが
「まぁまぁこんなに汚れてしまって…」
と気絶した少年兵のズボンの土をパタパタと払ってやった。
まぁまぁばぁちゃんの間延びした言動で一気に
その場の空気が和んだ。
イルカの青白い顔にも赤みが戻ってきた。
バツの悪そうな笑みを浮かべて
「すみません。ついカーッとしちゃって…」。
少年兵達にナイフとピストルを返すべきか
北原と深田兄は逡巡して相談した。
うなだれている彼等を見ると、まだ童顔の残る子供に過ぎない。
「大丈夫でしょう」深田兄が分厚い唇をゆがめて笑って言った。
この武勇伝でまたまたイルカはみんなの人気者となった。
「空手やってたんだ?」
北原が聞くと
「子供時代、身体が弱くていじめられていたものですから、
むりやり父親に町の道場に連れて行かれてずーっと
やっていました。今2段です」。

そう言われて見ると、スラッとした長身ながら筋肉質の身体だ。
北原は少年時代から家に手作りのサンドバックを庭に吊るして
自己流のボクシングをやっていた。
また、サラリーマンになって趣味で空手を習ったこともある
北原にはイルカが見せた技が如何に卓越したもので
あるか実感出来た。

この「イルカ」と呼ばれる青年は、北原たちが農場に残留を
決めて2カ月後、日本から突然やってきた。
聞けば、以前、女史の講演も聞いた事があり、
「新・ノアの方舟」も読んでいたのでアルバイトでお金を貯め、
大学を休学してパラグアイにやって来た。

以後、少年兵達も神妙に牛の世話をして過ぎた。
所が、数日後、この騒動が思わぬ事態になった。
数日後、ゴンザレスが警察官を二人連れて農場へやって来た。
イルカと北原、深田兄、寺岡の3人がいつも買い物に
行っているイパカライの町の警察の留置所へ放り込まれた。
この国では、交通事故でも何でもとにかく告訴されたら
一旦、警察の留置所に勾留される。
少年兵に事件を聞いてゴンザレスがこれ幸いと警察と
話をつけたのだろう。弁明も何も関係なかった。
暴行容疑だった。
鉄格子の 留置所にはパラグアイ人のヒゲ面の
60前後の男が1人、先客としていた。
ドヤドヤと東洋人が4人入って来たのを目を丸く見開いて
先客は見つめた。
8畳程度のコンクリート張りの床の 留置所の空気は
ひんやり湿ってカビ臭かった。
イパカライの警察まで深田弟と寺岡佳津子、西川みき、
大野恵子の4人がついて来た。
やがて1室に4人一緒に呼び出されて名前等を確認した。
刑事事件となった以上、こちらも弁護士を
たてなければならない。深田兄と北原たちは、
4人にすぐアスンシオンにいる岡本龍之介という人物に
連絡するように頼んだ。
岡本は千乃女史がこの農場を買う時から相談に乗っている
日本人移住者の長老で、北原達全員の永住権や
身分証明書取得など全部、面倒を見てもらった人である。
岡本さんなら何とか解決してくれるだろう、
と北原たちは期待した。

留置所にはベッドも何もない。
鉄格子の反対側の壁の高い位置に頭が入るか入らないかの
小窓があるだけだ。
もちろんこの小窓にも鉄格子がつけられている。
トイレは一応入り口右側にある。ドアはなく、
便器の腰掛けカバーは壊れてない。
むきだしの白い便器が寒々しい。
床にペタンと座るしかなかった。
「すみません!」イルカが泣きそうな声で謝った。
頭が膝の間に隠れてしまいそうだった。
「いい経験だよ」北原が笑って言った。
「下手したら俺があいつらに殴りかかったかも知れないよ」。
人は皆、野生の血のうずきを胸の中にしまいこんでいる。
北原は別府の路地裏でちんぴらを半殺しにした時の
あの鉛を噛んだような苦い味が口中に甦った。

「ケ  イシステ?」(何をやったんだ?)と先客が聞いた。
「ノー 何もやってないよ。こども達と
ちょっとふざけただけさ」北原が笑って答えた。
「そっちは何をやったんだ?」
「女房と間男を殺したんだ」
ニタリと先客は笑ってナイフで北原の胸を刺す真似をした。

夕方、留置所にキムさんが駆け付けてきた。
「だめだよう~。パラグアイ人と喧嘩したら
絶対不利になるんだから~」
細い目を見開いて唾を飛ばしてまくしたてる。
「誰か弁護士を頼んだのかね~?」
「ええ、コルメナの岡本龍之介さんに頼みました」
「ああ、岡本さんなら何とかしてくれるだろう」
キムさんも名前は知っていた。
岡本は、パラグアイ日本人移住地発祥の地、
ラ・コルメナに入植した人で70才を超えて
尚かくしゃくとしている。
現在、アスンシオンに息子夫婦と一緒に生活をしている。
この国の政界にも顔が効く有力者だ。

「ここの署長にも交渉してみるよ」とキムさん。
全身全霊でぶつかるキムさんの体当たり的行動力には
頭が下がる。
奥の部屋に行ったキムさんの大声が北原たちにも
途切れ途切れ聞こえてきた。
30分程度でキムさんが戻って来た。
「今晩1晩は泊まらなきゃならないよ」
キムさんが面目なさそうに言った。
夜8時過ぎにベッドに敷く薄いマットと毛布が
1枚づつ皆に配られた。
そして拳大の固いパン1個とアルミのコップに入った
ぬるいマテコシードが出てきた。
マテコシードとは、パラグアイのお茶であるマテ茶の
葉っぱをフライパンの上で砂糖と一緒に炒めて
それにお湯を注いで漉して飲む代表的飲み物だ。
世界3大茶の一つマテ茶にはミネラル分が多く含まれている。
 肉食が主体のパラグアイ人は昔から野菜も乏しく
食べなかったが、不思議なことに極端な肥満や糖尿病も
少なかった。その野菜不足を補ったのが飲むビタミンと
言われるミラクル ハーブのマテ茶だ。
彼等は朝昼晩と牛の角やパロサント(聖木)で作った容器に
マテ茶を入れて夏は冷たい水、冬は熱いお湯を注いで、
キセル(先端部分に多くの細かい穴を開けて茶葉が
口に入らないようにしている)でチューチュー吸って飲む。
 特に鉄分やマンガン、亜鉛の含有量はダントツに多く、
鉄は緑茶の5倍、亜鉛も2倍も含まれている。
鉄は吸収されにくいミネラルで欠乏すると貧血を起こしたりする。
女性に多いめまい、頭痛、全身倦怠感等はこの鉄分不足が原因。
亜鉛は日常の食事だけでは摂取不足になりがちな微量元素で
欠乏すると女性では、味覚障害、男性では生殖機能障害、
精子形成の低下などを引き起こす要因になる。
パラグアイ人男性が精力絶倫で何人もの愛人を持ち子供を
数十人も持っている理由が何となく分かる。
メンデスという先客は、このイパカライからちょっと奥に入った
ピラージュという町で小さな雑貨屋を営んでいると言う。
彼が殺した奥さんというのはこのイパカライの町に住む愛人らしい。

「お前たちはセニョーラを何人持っているんだ?」
「勿論、1人だよ」
北原、深田兄、寺岡の3人が当然だという顔で答える。
「俺は5人持っているんだ」威張ってメンデスが言う。
その愛人の1人が浮気している現場を目撃して
カッとなって殺ったらしい。
いかに尚武の国といっても色事でマッチョ振りを発揮しても
あまり威張れたものではないと思うのだが。
かって、南米の先進国だったパラグアイは無謀な
3国戦争(ブラジル、アルゼンチン、ウルグアイの3国を
相手にした戦争・1866~1870)で最貧国に転落した。
戦前120万人いた人口も戦後はわずか20万人に激減、
しかもその内、男子は10%、それも大半は子供や老人と
いう悲惨な状態になった。それ以降、パラグアイは
1種のアマゾナス国状態となって男天国となった。
つまり、男は種馬の役割を担うようになりあちこちに
愛人をつくりせっせと子作りに徹してきた。
子供はその奥さん(愛人)たちが働きながら女性の実家で
育てるという風習が残った。
大宅壮一の南米紀行文の中で紹介されている
「パラグアイを旅する男性を樹上から女性が襲う」
という逆強姦伝説が他国で流布するようになった。
 北原たちは、コンクリートの床に薄いマットを敷いて
毛布をかぶって横になった。
汗臭いすえた匂いがする毛布にほとんど鼻をつままんばかりにして
ムリヤリ目を閉じた。
しんしんとしたコンクリートの床の冷たさが背中に伝わって
中々寝つけなかった。
北原の脳裏にあまりにも甘い日本での軽薄な青春時代が明滅した。
男たちの埋もれ火のような野生が荒涼とした
闇の中でいつまでも疼いた。



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