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2008.04.27 (Sun)

アマゾン棄民一世、二世の政府、外務省への復讐劇! ブットビ面白かった「ワイルド・ソウル」

イグアスの福岡ペンション宿泊中、2冊の面白い本を読んだ。

1冊目は文庫本の上、下巻「天璋院 篤姫」
(宮尾登美子著・講談社)

NHK大河ドラマで放映中のストーリーなので興味深く一気に読んだ。

(新装版) 天璋院篤姫 (上)(新装版) 天璋院篤姫 (上)
(2007/09/07)
宮尾 登美子

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意外だったのは松坂慶子演ずる幾島が額の真ん中にでっかいコブが
あり皆から陰口で「コブ」と呼ばれていたことだ。
まぁ、容貌魁偉の老女が毎回出るよりも
松坂慶子の美女っぷりを呆(ほう)けて眺める方が
目の保養というものだろう。

虚弱体質だった13代将軍家定に輿入れした篤姫は家定との男女の
交わりもなく一生処女のままだった、という説を述べているが、
それが事実とするなら切ない話だ。

篤姫と家定の新婚生活は家定の病没によって
僅か1年半で終わる。

そして、14代将軍徳川家茂(いえもち・13歳で将軍即位)
との婚約に、歴史上有名な孝明天皇の妹である
皇女・和宮(かずのみや) の降嫁となる。

大奥での皇女派と徳川家代々のお女中たちとの
葛藤もなかなかに面白い。

だが、その家茂も将軍在位僅か8年、
21歳の若さで大坂城本営にて急死した。

家茂公の養母になる篤姫は、家茂公が暗殺されたと頑なに信じて
徳川家の家伝として「暗殺説」を言い残したそうだ。

そして、最後の将軍、徳川慶喜が登場する。

慶喜は天保8年(1837)水戸家の藩主徳川斉昭の
七男として生まれた。
11歳の時一橋家へ養子に入る。
慶応2年(1866)12月5日14代将軍家茂が
病死した事から15代将軍になった。

所が、篤姫は彼を毛嫌いしており、家茂の暗殺は
慶喜だと秘かに信じていたという。

宮尾登美子の小説「天璋院 篤姫」は、篤姫が
明治期に入って皇女・和宮と和やかに行き来して
波乱の生涯を終える、というその後の篤姫を描いて終わる。


この本には書かれていないが、
ちょっと脱線すると、
幕末の動乱期の裏面史として
現代に通じる“孝明天皇暗殺説”
“明治天皇偽物説”が生まれる。

幕末の激動の中、倒幕・佐幕両派の抗争の中で、
岩倉具視と長州志士等によって、刺殺されたとも
毒殺されたとも言われている。

これらの暗殺説を唱える人たちがその根拠としてあげるのが、
次のようなものだ。

孝明天皇は、徳川14代将軍・家茂(いえもち)を信任していた。

強硬な攘夷鎖国説を唱える孝明天皇は、
徳川将軍家との協調を本位に考える
「公武合体・佐幕派」であった。

孝明天皇の「忠臣」であった会津藩主・松平容保(かたもり・
御所並びに京都市中の治安維持の総責任者・京都守護職)
も維新後、「逆賊」とされてしまった。

岩倉具視や薩長土肥の開国・倒幕派にとって、
孝明天皇は彼らの目標実現を阻む邪魔者「敵」であった。

そして、倒幕派により「幼君」(睦仁親王)が擁立された

その明治天皇も実は「暗殺」されていた。

明治天皇とは“大室寅之祐”(おおむろとらのすけ・
先祖は南朝初代の後醍醐天皇!!ーという)が
すり替わった、という驚天動地のトンデモ説が
またまた、縷々出て来るのだが、
これに踏み入るとキリがないので、
ひとまず、この辺で打ち止めにしておこう。

さらに言わでもがな、のことだが、
坂本竜馬をはじめ倒幕の志士たちが、
実はフリーメーソンに操られていた、
という裏話もオモロイ…。

確かに彼らの資金提供、新政府の青写真などの
指南がなければ、世界史の奇跡とまで言われている
回天のマジックたる明治維新はなかっただろうね。

ホントにもう、脱線はやめときましょう…。


宮尾本中、
動乱の江戸幕府崩壊時、男どもが城内から
尻尾を巻いて逃げ出すのに比べ統制の効いた大奥…。
江戸城内の大混乱振りも興味深かった。

それにしても大奥3000人の女性たちとは
空恐ろしい程の膨大なムダな経費と思うのは
男の偏見か…⁇


2冊目「ワイルド・ソウル」
(垣根涼介著・幻冬舎 上、下巻)

近年読んだ本の中で最高に面白かった。
そのスリリングな疾走感、筋立て、濃い人物描写といい、
一気に読破した。

ワイルド・ソウル〈上〉 (幻冬舎文庫)ワイルド・ソウル〈上〉 (幻冬舎文庫)
(2006/04)
垣根 涼介

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初っ端からのアマゾン移民の暗い予兆、絶望、虚無…。
読みはじめて「棄民問題を扱うのにこんな方法があったのか!」
とショックを受けた。

著者の筆力、着想に脱帽!

日本政府を糾弾するアマゾン移民1世、2世たちによる
復讐劇に託した日本の移民政策の本質を知るのには
最高のエンターテイメント小説だ。

2004年、大藪春彦賞、吉川英治文学新人賞、
日本推理作家協会賞という3賞受賞も当然、と納得。
これは絶対お勧め本だ。


帯に「呪われた過去に決別するため、ケイたち3人は
日本国政府に宣戦布告する。外務省襲撃、元官僚の誘拐劇、
そして警察との息詰まる頭脳戦!」

史上初の3賞受賞、
各紙誌の絶賛を浴びた不朽の名作! ーとある。

「日本人がアマゾンに移住すれば3代目にはサルになる」
これは1951年、戦後の移住問題を巡って行われた
座談会記録「在伯邦人社会と移民問題」
アンドーゼンパチ

「アマゾンに移住させることはわが国民を死地に陥れるのと
同じ様なものだ」
初代のブラジル公使珍田氏が外務大臣に上申した報告書。

「アマゾンはとても外国人が住めるところではない。
万一、わが国民を移住させたなら幾百人の移民は
数ヶ月のうちにことごとく惨死するのは確実である」
1900年ブラジル公使大越氏による公文書。

アマゾン移民のことは角田房子さんの本で以前読んだが、
ことごとくマラリアで死んでゆくという、その悲惨な
有様に涙した。

幸いパラグアイの場合は、アマゾンの様なケースとは
異なったものの過酷なその開拓史には襟を正すものがある。

アマゾン同様、棄民扱いされたドミニカ移民たちは
日本政府を相手取って裁判を起こして戦ってきた。

これに対して時の小泉首相は、過去に犯した
外務省、日本政府の対応について陳謝した。

久しぶりに読み応えのある2冊に出会った。



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テーマ : オススメの本 - ジャンル : 本・雑誌

タグ : 棄民 アマゾン移民 明治天皇替え玉説

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